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又吉直樹が芥川賞を受賞した『火花』以前に書き進めていた“作家人生の原点”ともいえる小説を、行定勲監督が映画化した『劇場』。本作で演劇の世界で夢を追う主人公、永田を演じるのは、山﨑賢人。人生で初めて“ひげ”を生やした無精ひげ姿に、ボサボサのヘアスタイルで臨んだ山﨑に、役作りや作品の魅力などについて聞いた。

そのときにしか出せない自分のものを出せた。出会えてよかった作品です

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―― 演劇で夢を追っているが、社会や周囲の人々とうまく協調できない不器用な青年、永田と、彼に恋をして必死に支えようとする沙希の、生涯忘れることができない7年に渡る恋を描いた物語だ。

「台本を読ませていただいて、すごく面白かったです。表現者として、俳優も劇作家も共通する部分があると感じましたし、人間の弱い部分に共感しました。行定監督の作品は、『GO』とか『世界の中心で、愛をさけぶ』などが好きだったので、ぜひご一緒したいと思いました。ご一緒して思ったのは、役者に対して同じ目線で考えてくださっていること。舞台を演出されていることもあり、今回、劇作家である永田像を一緒に作っていきました。監督は意見をたくさん出してくださったし、僕からも意見をお話して、一緒に作った感じがあります」

―― 行定監督とは、永田の無精ひげや髪型などの外見から内面に至るまで細かく話し合ったという。

「撮影の前、監督に会いに行って、アイデンティティや自己主張とは何かということを話しました。どんな人も自己主張はあると思うんですけど、永田の場合は、ひげは『これが俺だ』っていう自己主張になっている。監督にひげを生やすのはどうかって言われて、僕もいいですねって答えました。伸びるかわからないけど、伸ばしてみますって(笑)。あと服装や下北沢に住んでいることなども。古着が好きで、よくわからないお店に入って店員さんの目が気になって、いらないタンクトップを買って帰るみたいな。そういう話が本に書いてあってなんかリアルだなって思って。僕も古着が好きなんですけど、人とかぶるのが嫌だなって、自己主張のような感じで着ているので、その部分もよく分かりました。髪の毛もただ形としてじゃなくて、目にかかってる感じが、『俺なんだ』っていう、そういうルックスの部分での意味を話したりもしました。また、喜び方一つにしても、永田は思いっきり喜ばないよねとか、デートに沙希ちゃんを誘ってOKをもらったときも、言葉より先に手が上に上がってしまう感じとか、監督が実演してくださって、いいですねっていうやりとりもしたりしました。そういう作業が、ものすごく楽しかったです。そうやって話し合いつつ、基本は自由で、1シーン1シーン、どういうふうに終わってもいいから永田として動いて、なるようにやってみてって。そうやって自由にやらせてくださいました。日々、『劇場』は映画として魅力的になっているんだろうなって感じられました。監督の発想が本当に面白くて」

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―― 表現者として、ほかの劇団の演出家に嫉妬する永田。山﨑は同じ表情者として共感する部分があったと話すが、他者への嫉妬についてはどう感じでいるのだろう。

「僕は良かれ悪かれ、ずっと『俺は俺だ』って思ってるかもしれません。又吉さんもシャットアウトしていたそうで、ほかの芸人さんを見たくないからってテレビをつけない時期があったらしいんです。僕も人の作品を見たいと思わない時期がありましたね。自分のやっている作品を頑張ればいいかなって」

―― 人とは違う自分。特別な自分でいたい。永田はそんな葛藤も抱えている。

「確かに僕もそんな時期がありました。いまは自分が一番生きやすいように生きようと思っています。無理をして自分を作ると疲れるし、無理したとき素に戻ると辛くなりますから。無理してかっこつけたりというのは、高校のときありましたけど。でも、よくわからないですね。かっこつけないのがかっこいいって思っていた時期もあるし、この職業はかっこつけたほうがいいのかなって思ったりもするし、だから自分の生きやすいように、と思っています」

―― 永田は口ばかり達者で稼ぎが少なく、沙希に頼り切ってばかり。その上、気難しさから沙希を翻弄し、傷つける。どうしようもないダメ男だ。

「僕もひどいなって思いました。でも、自分でもやりそうだなと思う感情の延長上というか、極端な形になっているのが、永田の言動だと思いました。嫉妬したり、これは恋愛だけじゃないですけど、都合の悪い話から逃れようとしたり。みんながうまくこなせたり、空気を読めたりすることが、永田はできないんです」

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―― しかし、同時にこんなにも愛らしくも憎めない男も他にはいないようにも感じられる。滑稽で笑えるシーンも多い。

「滑稽に、とは考えていました。クリント・イーストウッドに本気で嫉妬していたり、ナガターランドの下りとか、本気で言ってる永田が面白いんですよね。言い方もあると思うんですけど、本気で言っているから笑えるんだと思います」

―― もし、自身の友人に永田みたいな人物がいたら?

「寛 一 郎くんが演じた野原みたいに注意するかもしれません(笑)。野原は彼女に対する永田の態度を注意したけど、芝居は一緒に頑張っているんですよね。でも、人を傷つけたらよくないよってやっぱり言いますね。人を傷つけるのだけはだめだよって」

―― 沙希を演じるのは、松岡茉優。撮影の間2人でいろんなことを話し、役を作っていったというが、どんなことを話し合っていたのか。

「お互いが依存し合っているよね、って話しました。永田だけが沙希ちゃんに助けられているわけではなく、沙希ちゃんも永田といることによって生きがいを感じているんですよね。そんな話をしたり、この物語は主に2人しかいないし、2人の空気感は大事だねって話になって、あっち向いてホイとかして距離を縮めてました。茉優ちゃんが、あっち向いてホイをやると精神的な距離が縮まるって教えてくれたので(笑)。あとはこの物語は何だろうって話もして、最後は「おろか」という劇団で、「その日」という、素晴らしい演劇を作ることができた。2人のことは悲しいけど、人を感激させられる最高の演劇ができたって話かもねって話もしました」

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―― 一番会いたい人に会いに行く。そんな当たり前のことがなんでできなかったんだろうー。キャッチコピーにあるように、永田と沙希、不器用な2人の関係は、観ていて胸が痛くなる。山﨑自身、2人の関係性から感じることが多かったようだ。

「映画でも最後に言っていたことですけど、結局シンプルなんだなって思いました。難しく考えすぎたり、当たり前のことを当たり前に言えないことが、人間らしいというか。沙希ちゃんと出会って、カフェに行って、デートして付き合えたときに、永田はすごく救われて、自分のゴールみたいなところが一瞬見えたと思うんです。ナンパまでして付き合えた人を彼女にできたのに、演劇がうまくいかないこともあって、満足できずに演劇に没頭しすぎて、すれ違ってしまう。一つ達成したら次に行きたくなるのが人間なので、それはすごくわかるなって思いました」

―― これまでに見たことがない俳優、山﨑賢人が見られる本作。今、振り返り、山﨑にとってこの作品はどんな位置づけになるのだろうか。

「このときだけしかできない何かはあったと思います。感覚とかどんどん変わりますし、そのときにしか出せない自分のものを出せたので、出会えてよかった作品です」


Writing:杉嶋未来

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『劇場』

7月17日(金)公開


中学からの友人と作り上げた劇団「おろか」で脚本家兼演出家を担う永田。しかし、前衛的な作風は上演ごとに酷評され、客足も伸びず、劇団員も永田を見放してしまう。解散状態の劇団という現実と、演劇に対する理想のはざまで悩む永田は、言いようのない孤独を感じていた。そんなある日、永田は街で、自分と同じスニーカーを履いている沙希を見かけ声をかける。
自分でも驚くほどの積極性で初めて見知らぬ人に声をかける永田。突然の出来事に沙希は戸惑うが、様子がおかしい永田が放っておけなく一緒に喫茶店に入る。
女優になる夢を抱き上京し、服飾の学校に通っている学生・沙希と永田の恋はこうして始まった。一緒に暮らし始めた2人だが、永田は理想と現実のはざまを埋めるようにますます演劇に没頭していく……。

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https://gekijyo-movie.com/

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