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三木孝浩

【三木孝浩監督インタビュー】 映画監督デビュー15周年特別インタビュー!

レコードメーカーでミュージックビデオのディレクターとしてORANGE RANGEYUIなど数々のミュージックビデオを手掛け「MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2005」最優秀ビデオ賞、「SPACE SHOWER Music Video Awards 2005BEST POP VIDEOなどを受賞した三木孝浩。2010年に映画『ソラニン』で長編映画監督デビューを果たし、現在までに15年間で劇場公開映画作品を20作、配信限定作品を1作など多くの映画を手がけ“青春恋愛映画の名手”と呼ばれる存在に・・。デビュー15周年を迎えた心境や、作品制作に対する想い、今後の夢などについて聞いた。

 

■映画監督デビュー15周年おめでとうございます。まずは15周年を迎えられた心境を教えてください。

数字で聞くと「15年ってまぁまぁ長い」って思うんですけど、本当にあっという間な気がします。ずっと企画の話をいただけて、わりと同じペースで続けられているのですごく幸せに感じていますし、作品毎にいろんな出会いがあるので1つ1つが大きな財産だなと思います。

 

■ミュージックビデオの監督から映画監督になられましたが、映画監督は子供の頃からの夢だったのでしょうか?

昔から映画監督になりたいと思っていましたが「映画を作りたいな」と本格的に思ったのは高校生くらいからです。大学で映画サークルに入って自主映画を撮ったりしていたのですが、映画監督になる方法がわからなくて。音楽も好きだったし、当時岩井俊二監督がミュージックビデオ出身で映画を撮られていたので「そういう道もあるんだ」と知って、まずは映像に近い仕事をしなくてはと思って映画監督の足がかりとしてミュージックビデオの監督になった感じです。

 

■前回『知らないカノジョ』のインタビューの際に、ミュージックビデオのディレクターから映画監督になったときが“人生の分岐点だった”いう話をされていましたが、転身されたきっかけは何だったのでしょうか?

年齢的なものが大きかったですね。ディレクター10年目になる前に環境を変えたいという気持ちが強くて「もしこのまま環境を変えなかったら映画監督にはなれないな」って思ってディレクターを辞めたのが9年目のときでした。

 

■すべての作品が大切な作品だと思いますが、その中でも特に印象に残っている作品はありますか?

うーん、難しいでね。でもやっぱりデビュー作の『ソラニン』ですね。スタッフ・キャストに恵まれて作品自体を認めてもらえたんですけど、実はけっこう悔しい思いをしたんです。周りのキャストやスタッフの力で良い作品が出来た中で、“自分は右も左もわからない状況でどれだけ力を注げたんだろう”と思うと自分のできたことなんてちっぽけなことだなと思って。デビュー作が認められれば認められるほど悔しい思いをしたので、次の作品も頑張ろうと思えたきっかけではありました。

 

■デビュー作の『ソラニン』を今もご覧になることはありますか?

自分の至らない部分が見えるので基本的には恥ずかしいし見るのは相当覚悟がいりますが、たまに見返します。でも初作品で音楽に関わるバンドの映画を手がけることができたのはその後の自分の強みを出せるきっかけになって良かったと思います。

 

■監督の作品に出演されてきた若手の俳優さんたちがその後に多くの作品に出演し活躍されていますが、どういう気持ちでご覧になっていますか?

小学校の担任がその後の活躍を楽しみに見ている感じです。映画内でキャラクターが成長するけど役者本人も成長していってその姿がシンクロするときが撮っている中で良いと思う瞬間です。経験が浅いけれどガムシャラに迷いながらも苦しみながらも何かを生み出す役者の姿を撮りたいなと思っているのですが、若手ほどその姿が見られるので楽しいです。「もし映画監督にならなかったら何になりたかったですか?」と聞かれたら「先生」って答えるんですけど、人が成長する姿が好きなんです。

 

 

■4月12日に開催された「三木孝浩 filmo day 2025」にゲスト登壇された竹内涼真さんは『青空エール』と『アキラとあきら』の2作品に出演されていますが、6年ぶりに作品をご一緒されたときはいかがでしたか?

めちゃくちゃ頼もしくなっていましたね。座長として作品にどう向き合えばいいかという立ち振る舞いが『青空エール』の時と全然違いました。安心感や「自分がこの映画を引っ張っていくんだ」という強さ、胆力が竹内くんの中にできていたのですごく頼もしかったです。

 

■同じくイベントに登壇された福本莉子さんは『思い、思われ、ふり、ふられ』(ふりふら)と『今夜、世界からこの恋が消えても』(セカコイ)に出演されていますが、変化を感じられましたか?

莉子ちゃんは「ふりふら」が4人主役で「セカコイ」がヒロインだったので、メイキングにも映っていたけど「セカコイ」の本読みのときから少しナーバスになっていました。演じた真織が眠ると記憶がなくなる役だったので、役者にとってはハードルが非常に高い役で。1人で考えこまずにキャラクターを一緒に作り上げていこうと色々と相談してくれました。

 

■恋愛作品を多く撮られている中で『アキラとあきら』や『夏への扉』など違うジャンルの作品も撮られていますが、作品毎で意識の違いなどはありますか?

恋愛作品は“未熟な自分がどうやって好かれる自分になれるのか”という部分を撮っていて、与えられたシチュエーションの中でキャラクターがどう成長していくかを描きたいと思っているので、物語のベースが恋愛だろうが仕事だろが部活だろうがあまり変わらないですね。『アキラとあきら』も現場で言っていたのは、2人がすれ違いつつもバディとして成長していくのでどこか恋愛ものと構図が一緒で、最初は“嫌い”からスタートして、反目しあってぶつかり合って、最後には“一緒に頑張る”という内容なので、同じ気分で撮っていた節はありますね。

 

■原作がある作品を多く実写化されていますが、撮る際に一番大切にしていることはなんですか?

原作者が一番のお客さんだと思っていて「原作者が一番大事に思っているコアの部分は何なのだろう」って考えて、絶対外さないようにしています。ストーリーもキャラクターも両方大事ではありますけど、作者がどこに一番愛を注いで大事にしているのかを外さないようにしていきたいと思っています。

 

■他の監督や作品に影響を受けることもありますか?

バリバリありますね。撮影中でも他の作品を見てインスピレーションをもらうこともありますし、全然違うジャンルを見ていても「このカットいいな」とか「このカメラワークいいな」と思うと「この作品に取り入れたらいいかも」って思うこともあります。

 

■仕事以外の時間はどのように過ごしていますか?

映画を見に行ったりもします。あとは格闘技を見るのが好きです。昔からボクシングや総合格闘技を観にいくこともあります。自分が全くやらないジャンルなので逆に見るのは楽しいです。

 

■自分が監督した作品を公開後に劇場に見に行かれることもありますか?

「どういうところで泣くのかな」とか「どういうところで笑うのかな」とお客さんの反応を絶対に見たいので劇場へ行きます。上映の終わり時間を確認して、ロビーやエレベーター前で見た方がどんな会話をしているのか後ろで聞いていることもあります(笑)。見ているお客さんの表情が一番伝わるので気にして見るようにしています。

 

■今後挑戦してみたいことはありますか?

ホラーもコメディもサスペンスもアクションも作品のジャンルを問わずに見るので、やっていないジャンルに挑戦したいです。人を泣かすより笑わせる方が難しいと思っていて、ガッツリお笑いはやったことがないので難しさも感じつつもチャレンジしてみたいです。徳島県出身で西日本よりの人間なので「笑わせたい」って欲がどこかにあります。恋愛要素ありつつもコメディ要素がより強めの作品をやってみたいです。

 

■最後に今後のどのように活動を続けていきたいと思われていますか?

60歳になっても70歳になっても10代の子達の恋愛映画を撮っていたいという願望がありますね。新鮮さを失わずにいたいなと思います。「この思いを誰かに伝えたい、でも伝える術がない」と思ってきた中で「やっと映画という手段であの頃抱えてきたものを伝えられるようになった」というのが自分の創作の源でイマジネーションになっているので、そこは絶対に忘れたくないです。

 

 

<プロフィール>

三木孝浩(ミキ タカヒロ)

2000年よりミュージックビデオの監督をスタートし、MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2005/最優秀ビデオ賞、JUJU feat. Spontania『素直になれたら』のプロモーションの一環として制作した世界初のペアモバイルムービーでカンヌ国際広告祭2009/メディア部門金賞などを受賞。 2010年、映画『ソラニン』で長編監督デビュー。以降の代表作は『僕等がいた 前篇・後篇』(2012)、『陽だまりの彼女』(2013)、『ホットロード』(2014)、『くちびるに歌を』(2015)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020)、『きみの瞳が問いかけている』(2020)、『今夜、世界からこの恋が消えても』(2022)、『TANG タング』(2022)、『アキラとあきら』(2022)など