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島田惇平

【島田惇平インタビュー】出演舞台『ショルダーパッズ』が世界最⼤の芸術⾒本市で海外初公演決定!

2026年に活動25周年を迎える「劇団⿅殺し」が集大成作品となる『ショルダーパッズ』で海外公演に初挑戦する。ショルダーパッズは男性の⾐装は2枚の肩パットのみ。シンプルな⾁体と想像⼒の翼のみを武器に、演者と観客、双⽅の世界を無限に解放することに挑戦する表現スタイル。2023年の『ザ・ショルダーパッズ』公演以来、同作に出演する島田惇平に初海外公演へ思いや公演を控えている現在の心境、「劇団⿅殺し」への思いを聞いた。

 

最初に「劇団⿅殺し」の公演をご覧になったときの印象はいかがでしたか?

最初に見たのは2016年に上演された『キルミーアゲイン』という作品で「鹿殺し」を知ったきっかけでした。役者を初めて間もない頃だったんですけど、これが“舞台のエネルギーなのか”、“人のエネルギーってこんなにもすごいんだ”ということを初めて生で体感した瞬間でした。事務所の人から「島田くんはいずれ「鹿殺し」と関わることになると思うから見に行きなさい」って勧められて、最初は「はぁ」って感じだったんですけど、今思うと「まさしく、そうなった!」っていう感じです。僕の中の踏まれても踏まれても折れない雑草魂と「鹿殺し」の演劇スタイルが似ているということを感じ取ってくれて勧めてくれたんじゃないかと思います。

 

■2023年に『ダリとガラ』で「オフィス鹿 / 劇団鹿殺し」公演に初めて参加されましたが、カンパニーの一員として演じられていかがでしたか?

初めては『ダリとガラ』のプロデュース公演だったので丸尾(丸一郎)さんはいらっしゃったんですが、(菜月)チョビさんはいらっしゃらなくて。『ザ・ショルダーパッズ』本多劇場公演に参加させてもらってようやく本公演としての「鹿殺し」を体感できました。舞台の上に人が立っていることの強さや生々しさ、当たり前のことなんですけど“舞台表現は人間がやっていることなんだ”というのを『ショルダーパッズ』で感じることができました。きっと『ショルダーパッズ』だったからこそ感じられたことなんだと思います。僕が初めて『キルミーアゲイン』を見た時の感覚に間違いはなかったし、一緒にものを作っていきたいと感じました。

 

■今回『ショルダーパッズ』をエディンバラで上演すると聞いていかがでしたか?

嬉しかったです。『ザ・ショルダーパッズ』が終わった時にスタッフさんも含めてみんなで打ち上げして、その席でスタッフさんが「海外で絶対やったほうがいいよ」っていう話をしてくれて、僕もそれに乗っかって「絶対海外でやったほうがいいですよ!」っている話になったんです。実際にそれで動いてくれて「次の年にいくぞ!」ってことになったんですが、色々壁があってなかなかうまくいかなくて。ようやく2年の時を経て行けることになったと聞いた時は震えましたね。海外で芝居を挑戦するのは初なので、未経験のことに挑戦できる怖さもありつつ、ワクワクもあるいうのが率直な感想でした。

 

 

■前回の公演と比べるとキャストの人数も違ったり、演じる役が増えたりしていますが、全く別の『ショルダーパッズ』を作られている感覚なのでしょうか?

稽古が始まる前も、稽古が始まって数日経ってからも、台本が「英語」だったというのがあったので「違うものになりそうだな」という感覚があったんですけど、稽古が進んでいろいろなことを試していく中で、台詞に日本語がmixされたりしながら結果的にたどり着いたもので稽古をしているんですけど、全く違うものではなくて、言葉とかいろんなものを超えて本質的には全く変わらずに届けることができるんだと思えるようになったところです。

 

■「少しでも日本語で上演していたときの感覚に戻したい」という思いから英語日本語mixという斬新な表現になったということですが、いかがですか?

“日本語がわからないけど英語がわかる人”、“英語がわからないけど日本語がわかる人”、“どちらの言葉もわからない人”がいらっしゃると思うんですけど、「自分がお客さんならどう聞こえるかな」というところを最初に考えていろんなパターンを自分で想像してみて、日本語と英語のmixした言語を演者がどう扱うべきなのかを結構考えました。多分これが衣装を着て演じるストレートなお芝居だったら言語が大切で大きな情報の1つになると思うんですけど、今回僕らは衣装がショルダーパットのみで役者という身1つで全てを表現しなくちゃいけないので言語は情報の1つであって、自分の体で表現できることがたくさんある気がして、この作品ができた理由を全て納得できました。難しいけど一表現者としてやりたい、やらなきゃいけないと思ったところがありました。

 

■インタビュー時点では稽古中で公演まであと数週間ですが、公演を控えた現在の心境はいかがですか?

いろんな感情があります。遠足前の子供みたいなすごくワクワクな気持ちもありますし、好きな人に会う前日のようなドキドキもあるし、経験はないのですが戦地に行かなければいけなくて「僕の人生、もう終わるかもしれない」っていう恐怖を感じる気持ちでもあるし、いろんな感情が自分の中で蠢いている感じです。向こうに行っても色々な感情を感じると思うんですけど、それがこの先の僕の人生にどんな影響するのかなと思うと少し楽しみでもあります。感じられることは全て感じたいし、“なるようになれ!”っていう感じです。

 

 

■今回の海外での芝居初挑戦は今後の人生のターニングポイントになると思いますか?

どうですかね、ちょっとわからないです。役者人生としてのターニングポイントという意味では僕は毎回どの舞台でも感じていてターニングポイントはいくらでもあると思っているのですが、エディンバラで過ごす1ヶ月間は間違いなく僕の人生に何か影響を及ぼすと思うし、僕が変化する経験に絶対になると思うのでそれを逃してはいけないと思います。

 

■3週間というロングラン公演になると思いますが、公演の他に何か楽しみにしている予定などはありますか?

丸尾さんのリクエストで休演日にみんなでネス湖に行こうという話をしています。本当は時間があればロンドンに行って本場の芝居を見たかったんですが、エディンバラからけっこう遠いので今回は諦めました。「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」内にも世界中から色々な人が来て色々なことをやっているので、もちろん自分達のことが優先ですが、空き時間があるなら見てみたいと思います。ロンドンに行くチャンスはまたあると思いますが、エディンバラに行く機会はなかなかないと思うので街も歩いてみたいです。

 

劇団⿅殺し」は来年で活動25周年を迎えますが、劇団の一番の魅力はどこだと思いますか?

今までいろんな劇団や団体に参加させていただきましたが、僕が「鹿殺し」の一番好きなところは人間くささというか、丸裸でものを作ることに対してすごく貪欲で演劇の力を信じて止まないところですね。マイナスのものも含まれてはいますが、それも含めて生々しさが一番人間的だなと思うんです。あとこれは当たり前で大事なことではあるんですけど普通は商業的なことが前に出てくる中、「鹿殺し」は商業的をあまり感じなくて人間らしさを感じるところに一番惹かれましたし、好きなところでもあります。

 

 

劇団⿅殺し」には運命的に出会ってしまった感じでしょうか?

何かと出会う時って“たまたま出会った”とか“自分で選んで出会いにいく”とかいろんな出会いがあると思うんですけど、「鹿殺し」に関しては言葉にすると “出会ってしまった”が一番合うと思います。さっきも話したのですが、事務所の人に勧められたっていうのもありつつ、僕自身アートが好きで、サルバドール・ダリが好きで、ダリの舞台をやるって聞いてオーディションを受けたいと思ったんですけど、それを制作していたのが「鹿殺し」で。役者人生の中で模索していた最中で踊りを始めたり、いろんなことを突き詰めたかったし、逆に概念をぶち壊したかった時期でもあったので、すごくパッションがある人たちに出会えたことによって自分にも火がついたので、出会うべき相手には必然なタイミングで出会うんだなと実感しました。運命に近いところがあったのかもしれないです。

 

■最後に海外公演に向けての意気込みを教えてください!

とにかく全て逃さないように日々を過ごしたいです。悪い意味で人は捉えますけど、海外という普段とは違う環境にいくと「海外に来たぞ!」って気が大きくなってしまうことがあると思うんですけど、僕はそれを良い方向に使いたいなって思っています。いろんなことにチャレンジするエネルギーにしたいと思いますし、お客さんが感じていることもできれば一粒漏らさずに自分に蓄えていきたいと思うし、全ての瞬間を逃さずに経験したいなと思います。限りなく難しいことではあるけど後悔は全くしたくないのでやりたかったことを全て出し切って日本に帰ってきて、凱旋公演で日本のみなさんにそんな姿を見せたいなと思います。海外のお客さんにどう受け止められるかわからないですけど、言葉とか国を超えた上で表現がどう伝わるか僕にとっても今後の表現をする上での学びにもなったらなと思います。

 

 

 

<作品紹介>

Shoulder pads 『1 Shoulder pads -GALAXY TRAIN- Japanese musical theatre』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原作:宮沢賢治『銀河鉄道の夜』

脚本:丸尾丸一郎

演出:菜月チョビ

出演:菜月チョビ、丸尾丸一郎、橘輝、浅野康之、島田惇平、谷山知宏

 

公演期間:2025年8月1日〜23日(1日はプレビュー、10日・17日は休演)

会場:Thistle Theatre (Greenside @ Riddles Court) 322 Lawnmarket, Edinburgh EH1 2PG イギリス

 

 

<プロフィール>

島田惇平(シマダジュンペイ)

1989年10月21日、埼玉県出身

役者業を行う中、身体表現と出会い、森山未來、辻本知彦、山田うん氏に師事を受ける。2017年より路上、舞台、単身イスラエルへダンス留学等を経て、身体表現を学び始める。芝居と身体表現を追求。

主な出演作はミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』『フィスト・オブ・ノーススター 北斗の拳』、舞台『黒蜥蜴〜Burlesque KUROTOKAGE〜』『あらしのよるに』『民衆の敵』『メトロポリス』など。