【三木孝浩監督インタビュー】監督作品『君が最後に遺した歌』3月20日(金・祝)公開!

韓国で邦画実写映画の歴代2位となる観客動員数125万人を記録した映画『今夜、世界からこの恋が消えても』(通称『セカコイ』)の監督 三木孝浩×脚本 吉田智子×音楽プロデュース 亀田誠治の最強チームが再び集結し、一条岬の人気小説『君が最後に遺した歌』(通称『君歌(きみうた)』)を実写映画化。詩作が密かな趣味の主人公・水嶋春人と文字の読み書きをすることが難しい「発達性ディスレクシア」を抱えながらも歌唱と作曲の才能を持つヒロイン・遠坂綾音のおよそ10年を描くラブストーリー。三木監督に本作への想いや作品へのこだわりなどについて聞いた。

◾️『君が最後に遺した歌』という作品タイトルと映画を観た時の印象が良い意味で違ったのですが、監督が最初に原作を読まれた時はどのような印象を持たれましたか?
原作を最初に読んだ時に春人と綾音のキャラクターが本当に愛おしくて、すれ違いながらもお互いを想い合っている2人がどう進んでいくのかを見ている人も温かく見守っていける作品になれば良いなと思いました。
◾️作品では春人と綾音の10年間という長い時間を描かれていますが、演出で特にこだわったのはどの部分ですか?
これまで作ってきた恋愛映画はすれ違っていた2人がお互いの想いに気づくのがゴールになることが多かったのですが、今作はそこから2人の関係性がどう変化していくのかが原作で面白いなと思った部分でもありますし、意外と自分がやってこなかったことだなと思いました。2人を見守っていくように物語が進んでいくので、感情を作り込むのではなく2人がリアルにその場で感じたことを大事にしてほしいと現場でも話していて、生っぽさというかドキュメンタリー感を意識しました。

©2026「君が最後に遺した歌」製作委員会
◾️以前インタビューをさせていただいた際に監督の作品に出演された若い役者さんのことを「小学校の担任がその後の活躍を楽しみに見ている感じで見守っている」とお話しされていましたが、『セカコイ』以来の道枝さんはいかがでしたか?
『君歌』は綾音の姿を見た時に春人がどう反応するのか、“出す”側でなく “受け”の芝居が大事で、『セカコイ』はキャラクターとして自己犠牲を払う聖人的なキャラクターだったので今作とは全く逆でした。地に足がついた等身大のどこにでもいる春人というキャラクターが綾音と出会って感情が変化していく様が大事だったので、道枝くんはどれくらい“受け”の芝居ができるのだろうかと思っていたんですけど、台詞のない彼女を見ている表情がただ魅了されているだけでなく、羨望のまなざしだったり、自己肯定感の低い自分の才能に対してのネガティブさなどの複雑な感情が道枝くんの表情で見て取れたのが『セカコイ』からの成長を感じたし素晴らしいなと思いました。
◾️今回、道枝さんには「どんな春人を演じてほしい」という話をされましたか?
一面的じゃない“ネガ”と“ポジ”の両方の感情を持つことが大事で「春人の感情をどう表現するかがテーマ」と話をしていたのですが、見事にクリアしてくれました。

©2026「君が最後に遺した歌」製作委員会
◾️生見愛瑠さんは今回初めて演出されたと思いますが、第一印象と芝居を演出して違いを感じられた部分はありますか?
現場で結構驚かされっぱなしだったんです。パブリックイメージはどちらかというとすごく明るくて可愛らしい印象なんですけど、綾音というキャラクターの魅力でもある孤高の存在の空気感、自分なりにもがいているアンニュイ感、憂いの美しさなどは、これまで生見さんが芝居でそんなに出していなかった部分ですごく上手に演じられていたので、ぜひみなさんに観て欲しいなと思いました。
◾️毎回メインのキャストさん宛に手紙を書かれているということですが、今回も生見さんにお手紙は書かれたのですか?
そうですね、書きました。長編映画を撮る時は毎回書いていて、キャラクターに関しての覚書でもあるので「こんな感じのキャラクターでこんな物語を紡ぎたいと思っている」と書きながら自分なりにまとめている部分があって、それをメインキャストにも読んで理解していただくという意味でも渡しているのですが、今回も道枝くんと生見さんにお渡ししました。
◾️今作も音楽が軸となる作品ですね。生見さんが未経験から1年以上ギター練習に挑戦されて劇中でも披露されていますが、成長ぶりをどうご覧になっていますか?
もう信じられないですよね。ギターも歌もゼロベースからのスタートでどちらかだけでも大変で難しいことなのに、ステージの上でプロのアーティストとしての姿を説得力を持って見せなきゃいけないのは相当のプレッシャーだったと思うんですけど、見事にクリアしてくれました。裏では相当大変だったし努力しているはずなんですけど、努力している姿は見せないんですよ。自分の中で確信が持てたのは亀田誠治さんが音楽プロデュースの視点で彼女を見た時に「彼女なら大丈夫です」と太鼓判を押してくれたこと。みんなそこにかけましたし、求められるものに対して誠実に頑張って応えてくれた生見さんが素晴らしかったです。今回はバラエティに出演されている時の彼女とは全く違うこれまで見せたことのない部分を理解して出してくれました。生見さんが歌っている姿を見たらびっくりすると思うので、ぜひ早く観て欲しいです。
©2026「君が最後に遺した歌」製作委員会
◾️『セカコイ』『ほどなく、お別れです』に続き、亀田さんが音楽プロデュースされていて劇中でも重要なキーになっている楽曲を制作されていますが、楽曲に対しては何かリクエストされたのでしょうか?
プレイリストみたいなのを作って、作品のテイスト感や「綾音が歌う曲調はこんな感じですかね」というのをリファレンス的に聞いて頂きました。その上で亀田さんが彼女の声質や歌い方に合ってより歌詞や物語にリンクする楽曲を制作してくださって、亀田さんの負担は相当あったと思います。歌詞も春人と綾音の関係性をすごく豊かに表現してくれていて素晴らしかったです。
◾️春人と綾音を取り巻く人たちも素敵な方々ばかりでしたが、キャスティングはどういうこだわりを持たれていましたか?
今回は音楽が物語の軸になる作品なので映画全体にどこか音楽の匂いがあるといいなと思っていて、「湘南乃風」の若旦那(新羅慎二)さんに出演して頂いたり、竹原ピストルさんに先生を演じてもらったりしました。アーティストの醸し出す空気が音楽映画としての空気にマッチすると思って、そういうキャスティングにしたいという話は制作段階でしていました。
◾️三木組常連の野間口さんが本作にも警官役で出演されていますが、本作の野間口さんはいいかがでしたか?
三木組唯一のレギュラーキャストなんで(笑)。野間口さんがすごいなと思うのは毎回1シーンでも出演してくれてちゃんと爪痕を残してくれるんです。今回も綾音と萩原(聖人)さん演じる綾音の叔父である奥田とのバックボーンが一瞬でなんとなく伝わるやりとりを表現していただけたので「流石だな」と思っていました。いつも野間口さんに助けられています。

©2026「君が最後に遺した歌」製作委員会
◾️三木作品は毎回映像が本当に綺麗で今回も本当に美しかったのですが、撮影方法にもこだわりがあるのでしょうか?
『セカコイ』と同じくカメラマンは柳田(裕男)さんとご一緒しているんですけど、柳田さんと描く“思春期ならではの淡さ”みたいなトーンが撮影のルックや芝居とすごく相性が良いなと今回も思いました。特にその淡さが道枝くん自身の淡さにもちょうどシンクロする感じがあって、油絵じゃなくて水彩でいろんな色を重ねてできた空気感が出ている感じがありました。
◾️『君歌』は撮影から編集・公開までの時間が通常の作品より短いと思いますが、大変ではなかったですか?
今回はドキュメンタリーっぽく撮っていますし、同一人物で10年間の奇跡を描いているので、“この姿” “この空気感” “この表情”は今の道枝くん、生見さんの年齢だから出せている部分でもあるので、 “温めてから・・”というよりは2人のフレッシュ感をすぐお届けしたい、見せたいという気持ちです。
©2026「君が最後に遺した歌」製作委員会
◾️春人と綾音と同世代の方はもちろん幅広い年齢の方に共感していただける内容だと思いますが、監督自身は作品をどう観て欲しいと思っていますか?
アーティストとして綾音が音楽と共に生きていく中で春人がどこか取り残されたり、2人の関係値が変わっていく様を描いているんですけど、思春期ならではの“希望”と“諦め”の間で揺らぐ春人の感情になって綾音を見た時に「春人が綾音を見たらそういう気持ちになるよな」と共感することが自分にもありました。大多数の人が感じることでもあると思うんです。若かりし頃の照れや悔しさから自分の気持ちをちゃんと言えない思春期ならではのもどかしさや綾音が輝けば輝くほど照返ってくる春人のモヤモヤはどの世代にも伝わるんじゃないかと思っているので、大人世代のみなさんにも自分の過去と重ねながら観てほしいです。
◾️最後にインタビューをご覧のみなさんにメッセージをお願いします。
今回音楽が物語の軸で綾音の歌はもちろんですが、なかなか言葉にできない春人の感情を亀田さんが音楽ですごく上手に表現してくれていて、春人の感情を示す音楽の部分と綾音の歌の部分がうまく呼応しながら物語が進んでいくので、ぜひ音楽に注目してご覧いただきたいです。
(敬称略)
<作品紹介>
映画『君が最後に遺した歌』
2026年3月20日(金・祝)全国ロードショー
<あらすじ>
ある日、クラスメイトの遠坂綾音に詩を書いていることを知られた。文字の読み書きをすることが難しい“発達性ディスレクシア”の症状を抱える彼女に代わり、僕が詞を書き、彼女が歌う。“文字”のない君と、夢のない僕。何かが欠けた者同士。それは僕にしかできないこと、そして彼女にしかできないことだった。二人だけの歌、二人だけの居場所、二人だけの秘密の暗号。君と見つけた日々が、たった10年しかないと僕は知らなかった。あの時、言えなかったけど…本当は…。
キャスト:
道枝駿佑、生見愛瑠
井上想良 田辺桃子 竹原ピストル 岡田浩暉 五頭岳夫 野間口徹
新羅慎二 宮崎美子 萩原聖人
<プロフィール>
三木孝浩(ミキタカヒロ)
2000年よりミュージックビデオの監督をスタートし、MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2005/最優秀ビデオ賞、JUJU feat. Spontania『素直になれたら』のプロモーションの一環として制作した世界初のペアモバイルムービーでカンヌ国際広告祭2009/メディア部門金賞などを受賞。 2010年、映画『ソラニン』で長編監督デビュー。以降の代表作は『僕等がいた 前篇・後篇』(2012)、『陽だまりの彼女』(2013)、『ホットロード』(2014)、『くちびるに歌を』(2015)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020)、『きみの瞳が問いかけている』(2020)、『今夜、世界からこの恋が消えても』(2022)、『TANG タング』(2022)、『アキラとあきら』(2022)など。映画『ほどなく、お別れです』(2026)も現在公開中!